アダルトチルドレンと少女漫画と私
1996年が初版なので、紹介されているマンガで私がピンと来るものはほとんどないのだが、(かろうじてbanana fishくらい)
女性は誰しもアダルトチルドレンにならざるを得ないこの社会で育っていて、だからこそ、同性の作者が描き、テレビや映画のような男性の手が加わりにくい少女漫画は女性たちの癒しになりうるという内容だ。
そんな中で、私は今の少女漫画も結構すごいぞと思う。
それが、りぼんで連載されている「きらめきのライオンボーイ」と「ハニーレモンソーダ」だ。
まず「きらめきのライオンボーイ」はなんといっても現役りぼんっ子だった私が当時読んでいたのは「愛してるぜベイベ」だった槙よう子先生の作品だ。
愛してるぜベイベも、母親が育て切れなくなった娘ゆずゆを突然主人公の男子高校生きっぺいの家に置いていくところから始まる、なかなかヘビーな家族モノである。
それに比べると、きらめきのライオンボーイは一見キラキラとした恋愛モノに見える。
ヒロインのみわは昔男の子に虐められていた過去があり、漫画の世界や自分の内側に閉じこもる癖があった。そんなみわが憧れの漫画のヒーロー星さまにそっくりな桐敦に出会い、変わっていくというあらすじだ。
親友の笑心から守ってもらうことしかできなかったみわが、自分の力で、桐敦に助けを求められるようになり、桐敦の力を借りずとも、ひとりで生きられる力を身に付けるのを目の当たりにして、勇気をもらえる。
「ハニーレモンソーダ」はもっとすごい。
こちらも一見よくありがちな地味子×人気者モノかと思う。
でも実際は虐められっ子だったヒロインの石森ちゃんが、人気者の界と出会って、界の手を借りて、周りの人との信頼関係を築いていくことができるようになっていく物語だ。
私が好きなのは、界の元カノである芹那が、石森に対して、
「私は界がいてくれて弱くなった。でも石森ちゃんは違う。界がいると強くなることができる。」
と感じるシーン。
界だけに依存して、界がいないと生きていけなくなった芹那と、界との出会いをきっかけに、それ以外の人との人間関係が広がっていった石森の対比が素晴らしい。
そして、いま読んでいる章で石森の父親の存在が石森の生きづらさの原因ではないかと仄めかすシーンが増えてきているのだが、現代を生きる小中学生をターゲットにした漫画に、石森の生きづらさの原因を親だと描こうとするのかと感銘を受けている。
まだ読み終わってはいないが、この後石森が父親との関係にどう決着をつけていくのかが見どころだ。
どちらにも共通するのは、彼女たちが外の世界とつながっていくことで強くなっていくこと。そんな姿に、人を信頼することでいかに生きやすくなるかを実感し始めた私は心打たれるものがある。
ここまで書いておいて残念なことではあるが、現実世界には、桐敦も界もいない。
私たちには、私達を守り、周りの人を信頼せず、うちに篭る自分を変えてくれるそんな都合のいい存在は現れないことの方が多いだろう。
それでも、人に話せない悩みを(特に家族の問題を)抱える全ての世代の女性にとって、少女漫画というのは、私たちが得られなかった憧れを与えてくれる癒しになり得るのだと思う。
自分の中に篭ってしまう女性が少しでも、自分以外の他人を信じ、頼る、その1歩の勇気を私たちは少女漫画から受け取ることができる。
それは何歳であっても受け取って許されるモノなのだ。
ちなみに、これらの漫画は幸い、「マンガmee」というアプリでどちらも無料で読むことができる。
興味を持ってくれる人がいれば、癒しを求めに、少女漫画を読んでみませんか??